創作法話。 「地球の鼓動が、結んだもの」

童話の森
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悠眞の
Hoo〜〜 Waa!( 法話 )

創作法話。 「地球の鼓動が、結んだもの」。

。 遠い星の、話を、しよう。
いや、わたしたちが、今、立っている、この地球の、
遠い時間の、秘められた、話だ。

北の果て。
永い眠りにつつまれた、苔むした森に、
ひとりの青年がいた。
彼は、生まれてから一度も、
言葉というものを、口にしたことがなかった。

それでも、彼は毎朝、風の音に耳を澄ませ、
小鳥の軌跡を目で追い、
星のめぐりを、手のひらに感じていた。

そして夜になると、天のとばりに浮かぶ星たちの軌道を、
細い枝の先で、ひとつ、ひとつ、土にしるしていた。

ある朝のこと。
青年の背に、ふと、気配を感じた。
振り返ると、風の道をなぞるように、
彼の黒髪が、ひとすじ、また、ひとすじと、静かに、のびていた。

それは、まるで、誰にも語れなかった想いが、
ことばの代わりに、形を持ちはじめたかのようだった。
髪は、森の草を撫で、雪をわけて地を這い、
ゆっくり、ゆっくり、地球のいざないに沿って南へ歩きはじめた。

──そのころ、
地球の南の端、白く乾いた谷に、ひとりの老人がいた。
彼は、沈黙のなかで、記憶の旅をしていた。
かつて出会った人、
かつて交わしたことば、
かつて失ったものたち。

彼は、それらの、ひとつ、ひとつに、指を触れ、
胸の奥で何度も、名前を呼び、
感謝と悔いのおもいを、静かにたどっていた。

ある日、彼のあご先から、
一本の銀のひげが、静かに垂れのびているのに気づいた。
それは、ただ伸びているのではなかった。
彼の呼吸、ひとつ、ひとつに重なって、
その奥底にひそむ祈りが、糸のようにつむがれていたのだった。

ひげは南から、髪は北から。
ふたつの道は見えないまま、
地球の地下で、静かに、静かに近づいていった。

そして──
ある日、地球のちょうど真ん中、
誰にも知られず、誰にも見られぬその場所で、
黒い髪と銀のひげが、ひとつに結ばれた。

結び目は小さく、静かで、
まるで、二つの魂が、ようやく互いの名を思い出したかのように、
声も出さず、涙も見せず、ただ黙ってそこにあった。

その瞬間。
鳥も、魚も、化石たちも、
空も、海も、大地も、なにひとつ気づかなかった。
──けれど、地球は、確かに、音を立てて、鳴った。

──トン、と。

それは、地球の鼓動だった。

どこかで、泣いていた子どもが、ふと泣きやんだ。
どこかで、老いた人が、微笑みを思い出した。
どこかで、戦っていた者たちが、一瞬だけ手を止め、
風の中にある何かを、聴こうとした。

見えなくても、声にならなくても、
交わる想いが、この地球にはある。

わたしたちは、地球の上に「生きている」のではなく、
地球の「記憶の中に、生かされている」のかもしれない。

結ばれた髪とひげのように、
誰かの祈りと、誰かの願いが、
どこかで、そっと、静かに出会っている。

そのとき、きっと、地球の奥で、また──
トン、と。
小さく音が、鳴るのだ。

そして、その音を聴くことができる人が、
この星には、たしかに、いる。

Hoo〜〜 Waa!(

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